歯周病ってなあに
歯を支える周りの組織(歯周組織)の病気です。「歯周病」とか「歯周疾患」と呼んでいます。むし歯は症状が進行すると痛みが起こりますが、歯周病の場合は痛みのないまま慢性的に進み、歯ぐきからの出血や歯の動揺で気がつきます。見た目は普通と変りませんが、歯を抜かなければならないほど重症のこともあります。
歯周病は大きく、「歯肉炎」「歯周炎(歯槽膿漏症)」の2つに分けることができます。歯肉炎は、歯肉だけの炎症で、歯を磨いたときにときどき血が出たり、歯ぐきが少し赤く腫れたりします。
歯周炎は軽度の場合、歯磨きをすると、血が出ます。歯が浮く感じや歯ぐきがむずむずしたり、歯ぐきが赤く腫れたりします。歯周炎の中等度になると、歯が長くなったような気がします。歯ぐきから膿が出て、ものが噛みにくく、歯ぐきが腫れ、口臭が気になります。
歯周炎の重度になると、歯がぐらぐらして、歯ぐきからいつも膿がでて、ものが噛めなく、口臭がひどくなります。
歯周病は、病気が進行すると歯が抜けてしまい、食生活や社会生活に影響を及ぼします。日本では、55~64歳で歯周病の有病者率が82.5%と、他の病気に比べ高率を示しています。歯の喪失状況も60歳代で14本の歯を失い、80歳代で約半数の人がすべての歯をなくしています。その原因の約9割はむし歯と歯周病で占めているのです。
なぜ歯周病になるのでしょうか
歯周病の原因は、『歯の汚れ』つまり歯垢(プラーク)です。歯垢の形成は、特定の細菌が砂糖を利用して、粘着力のある多糖類をつくり、それを歯の面につけます。これは、とてもべとべとしていて、他の細菌も引きつけて細菌のかたまりをつくります。これが歯垢です。歯垢は1mg中に約1億個以上の細菌がおり、特にアクチノマイセス・ビスコーサス菌やバクテロイデス・ジンジバリス菌は歯肉炎や歯周炎を引き起こすことがわかりました。
また、歯垢は唾液の中のカルシウムと結びついて歯石をつくります。歯石は物理的に、歯ぐきを刺激して、歯周病を起こします。他に、ビタミンの欠乏やホルモンの異常、新陳代謝障害などの全身的要因が病状を悪化させます。
このほかに、歯周病を起こす要因としては、
1.不正な歯並び
2.歯ブラシの使い方の悪いものや、ヨウジの使い過ぎ
3.歯に合っていない金属冠や修復物
4.義歯のバネ
5.噛み合っていない義歯やプリッジ
6.歯ぎしり
7.全身的疾患、精神的ストレス、肉体的疲労、体質や遣伝的素因なども歯周病の原因につながります。
関連ページ:
>歯肉炎や歯周病は何歳くらいから起きるのか?
歯周病の予防はどうしたらいいの?
1.口の中をいつも清潔にしましょう
歯や歯ぐきの境についた歯垢が原因なので、歯ブラシを用いて、歯垢をきれいに取り除きましょう。
2.食事のとり方に注意しましょう
甘いものや歯につきやすい軟らかいものは口の中を不潔にします。繊維質のもの、硬い噛み応えのあるものをよくかんで食べましょう。
3.歯ぐきの観察をしましょう
まだ軽症の歯ぐきの病気は、歯や歯ぐきを磨くことによって、健康な歯ぐきにもどすことができます。歯を磨く時に鏡を見て、歯ぐきが赤く腫れていないか、血がでていないかなどを自分でチェックしてみましょう。異常があったら、歯科医に診てもらい、歯科衛生士に正しい歯の磨き方を教わりましょう。
4.規則正しい生活をしましょう
疲れや病気などで生活のバランスが崩れたり、喫煙も歯ぐきの病気の原因になります。全身の健康に気をつけましょう。
- このような症状は注意~お口のチェック~
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- 歯ぐきから出血する
- 歯垢や歯石がたまっている
- 起きたとき、ロの中がねばねばする
- 歯がグラグラする
- 歯がしみる
- 歯が長く見える(歯ぐきが退縮する)
歯周病予防のために、自分自身でできることは、歯の表面から歯垢(プラーク)を取ることです。
どんなに、歯を磨いても、歯垢が落ちていなければ、磨けたことになりません。歯垢(プラーク)のたまりやすい場所は、
- 歯と歯ぐきの境目
- 隣り合った歯と歯の間
- 奥歯の溝
特に、歯周病は歯と歯ぐきの境目に注意しましょう。また、歯周病の原因の一つに歯石があります。歯石は、歯垢が石灰化したもので、歯石のたまりやすい場所は、
- 前歯の裏側
- 上の奥歯の頬側
ここの場所はていねいに磨きましょう。
- 歯磨きの仕方
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- 歯ブラシの毛先を歯面に真っ直ぐ当てます
- 歯磨きの時間:歯は食べたらできるだけ、早く磨きましょう。口の中に砂糖が入ると、歯垢は活動して、酸や毒素をつくります。この状態は、食後すぐに始まり約40分間続きます。この時間を少しでも短くすることが歯や歯ぐきの健康を守ることになるのです。
- 歯ブラシの選び方
- 使う人の口の大きさに合わせた歯ブラシを選ぶことが必要です。あまり大きな歯ブラシですと、口のすみずみまで磨けません。一般的には、柄の真っ直ぐな、植毛部の小さめなものが使いやすいとされています。
- 歯磨き剤
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歯磨き剤の働きは、歯磨き剤を使って、歯磨きすることで、歯垢を取れやすくします。また、歯磨き剤には研磨剤が入っていて、茶渋などの色素を落とします。最近は薬効を考え、むし歯予防や歯周病予防のために、つくられたものも市販されています。
歯磨き剤は歯磨きの補助的な意味があります。歯垢を取るには、歯ブラシで丁寧に磨くことが一番です。歯磨き剤は、つけ過ぎないようにしましょう。
関連ページ:
>歯科医が選ぶ!歯周病予防に適した歯ブラシ3選!
歯周病と全身疾患の関係
歯周病を治療せずそのままにしておくと、歯周組織が破壊され炎症を引き起こします。
その際、炎症によって発生する毒性物質が、歯肉の血管から全身に入り様々な病気や症状の悪化を引き起こすことがあります。炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせたり(糖尿病)、早産や低体重児出産、血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)にも関与しています。
関連ページ:
>糖尿病と歯周病の関係についてはこちら
専門家(歯科医師・歯科衛生士)に、定期的に口の中の点検をしてもらいましょう
これをプロフェッショナルケアと言います。口腔管理は、自分自身で行うのが基本ですが、なかなか□の中をきちんと見るのはむずかしいです。定期的に歯科医院に行って、健診を受けて、機械的な口腔の清掃(PMTC:プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)や、歯石除去を行い、歯周病の予防に努めましょう。セルフケアとプロフェッショナルケアの両立で、お口の健康が保たれます。