おかし怪獣
むかし、むかし、箱根の山奥に甘いお菓子が大好きな”おかし怪獣”がすんでいました。”おかし怪獣”は夜になると山奥から足音をしのばせながら、のそり、のそり村におりてきます。村におりてきた”おかし怪獣”はお菓子屋さんのお菓子をおなかいっぱいたべていきます。そのため、村中のお菓子屋さんのお菓子がぜんぶなくなってしまいました。
村中のお菓子屋さんはとてもこまってしまいみんなで相談をしました。
「おかし怪獣が村にこれないように、足にくさりをつけておこう。」
「そうだ、そうだ。」
「村中のおかし屋さんにがんじょうなカギをかけておこう。」
「ウン、ウン。」
お菓子屋さんは、夜になると”おかし怪獣”がこないようにトビラにカギをかけたり、頑丈なつっかえぼうをしたりしました。
しかし”おかし怪獣”はお菓子をぜんぶ食べて山にかえっていきます。
ある月夜の晩、ふしぎなことがおこりました。山奥からウーン、ウーン、ウォー、ウォーといううめきごえと、ドスーン、ドスーン、グラグラと地面がゆれて村の人たちは眠れない夜がつづきました。
「あの音はいったいなんだろう、なんだろう。ぐらぐらゆれるのはいったいなんだろう、なんだろう。」
そこで勇気のある村長さんが、暗い暗い山奥へ見にいくことになりました。長ぐつをはき左手には懐中電灯を、右手に長いほうきをもって暗い山奥へ入っていきました。
しばらく山道を歩いていると、うめきご之がだんだん大きくなり地面も大きくゆれて、立っていることができなくなり、はうようにしてすすんでいきました。
あっ、おかし怪獣がころげまわっている。」
「は いたーい、いたーい。歯がいたーい。」
ふしぎなできごとは、お菓子をたべすぎた”おかし怪獣”が歯がいたくてころげまわっていたのです。
そこで村の歯医者さんが”おかし怪獣”のむし歯をなおすことになりました。歯医者さんはいいました。
「お菓子ばかりたべているとむし歯になってしまうことがわかったね。今日からおやさいもたべて牛乳ものもうね。」
「ウン、ワカッタ、ワカッタ。」
痛かった歯をなおしてもらった”おかし怪獣”は、元気になり村の人たちにお礼をいって山にかえっていきました。そして山の中でダイコンやニンジン、ナス、キュウリをつくってたべるようになりました。”おかし怪獣”は、二度と村におりてこなくなり、甘いお菓子もたべなくなり、毎日歯をみがくようになりました。
ほんとうによかったね!
文・あびる のぶこ/絵・てらだ のぼる