歯列矯正で「マウスピース矯正」をお考えのあなたへ
- 2024/10/11
- 最新歯科医療情報
この記事の目次
マウスピース矯正のメリットとデメリットを理解しよう
前歯の歯並びが気になるものの、従来の「ワイヤー矯正」では装置が目立つため、矯正をためらう方も多いのではないでしょうか。そのような方にとって、透明な樹脂製のマウスピースを使って少しずつ歯並びを整える「マウスピース矯正」は、魅力的な選択肢かもしれません。しかし、ワイヤー矯正とマウスピース矯正にはそれぞれメリットとデメリットがあり、患者さんに適した治療方法を選ぶことが大切です。
マウスピース矯正のメリット、デメリット
メリット
1.透明な装置のため、矯正装置が目立たない。
2.自由に脱着ができ、歯磨きが容易。
また、最近の研究では、マウスピース矯正は上顎の奥歯を移動させたり、歯を埋め込むことに有利だという見解もあります。
デメリット
1.歯列全体を大きく動かす治療には向かず、ワイヤー矯正の方が優れている場合もあります。
2.取り外しができるため、装着時間が不足すると治療が進まないことがあります。
3.前歯を後退させる必要がある場合、後退量が限られることがあります。
従来のワイヤー矯正と比較したマウスピース矯正の利点
マウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正に比べて見た目が目立たず、患者さんの心理的な負担を軽減します。特に、装置を外して歯磨きができる点は、矯正治療中のむし歯予防に有利です。装置が目立つことに抵抗を感じていた患者さんには、非常に良い選択肢です。
公益社団法人日本矯正歯科学会は、マウスピース矯正について以下のような指針を公表しています。
1.マウスピース矯正には大きな期待があるが、すべての症例に対応できるわけではない。
2.治療の適否判断や予期せぬ事態への対処、治療結果は歯科医師の責任となる。
3.専門的な教育と高度な診断能力、治療スキルが必要。
これらを踏まえ、審美的なメリットは大きいものの、ワイヤー矯正と同様の結果が得られない可能性もあるため、治療法選択時には慎重な判断が求められます。
マウスピースの種類
マウスピース矯正には、治療開始時にすべてのマウスピースを一度に作成する方法と、段階的に作成する方法の2種類があります。どちらが優れているかは一概には言えませんが、技工所への費用設定が異なることがあり、料金に差が生じることがあります。また、現状では保険適用外のため、各歯科医院で料金説明をよく確認することが重要です。
安価なマウスピース矯正がSNSなどで広まったこともありましたが、その治療結果には疑問が残るケースが多かったと考えられます。
治療の流れ
マウスピース矯正でも、従来の矯正と同様にレントゲン検査や側面頭部X線規格写真が必要です。また、歯がどのように動くかをシミュレーションし、その結果をもとに装置を制作します。治療開始時や途中では、歯にアタッチメントを装着したり、歯を少し細くする処置を行うことがあります。
マウスピースは通常2週間ごとに新しいものに交換し、患者さんがきちんと装着できていれば来院間隔を延ばすことも可能ですが、治療計画の遅延やアタッチメントの破損なども考慮し、適切な来院スケジュールを維持することが重要です。
費用
費用は各歯科医院の裁量に任されており、特に途中でのマウスピースの再制作が必要な場合の料金について、事前に確認しておくことが大切です。多くのケースで再制作が発生するため、これを前提として治療を進めることが望ましいです。
期待通りの治療結果を得るために
私自身、マウスピース矯正が普及し始めた頃、ワイヤー矯正に代わる可能性を感じましたが、実際にはとってかわるもににはなっていません。多くの歯科医師が、マウスピース矯正ではワイヤー矯正と同じ結果が得られないと感じています。優れた治療結果を求める歯科医師ほど、この点を重視する傾向があります。
そのため、マウスピース矯正を検討する際には、施術する歯科医師がワイヤー矯正で良好な結果を出しているかどうかを確認することが重要です。
歯科医師からのメッセージ
歯列矯正を含む医療には、さまざまな方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。ワイヤー矯正とマウスピース矯正の違いを理解し、歯科医師との適切なインフォームドコンセントのもと、最適な治療法を選択することが大切です。
■参考
1)公益社団法人日本矯正歯科学会ホームページ「アライナー型矯正装置による治療指針」http://www.jos.gr.jp/medical/file/aligner_pointer.pdf
2) 日本矯正歯科学会からのおしらせ「アライナー型矯正装置による治療指針 一般公開にあたって」http://www.jos.gr.jp/news/2017/0323_00.html