妊婦歯科健診を受けよう
- 2023/02/17
- 歯とお口の基礎知識
妊婦さん歯科健診のススメ
妊娠すると、栄養が赤ちゃんに行き渡るためお母さんの歯がわるくなるという話を聞いたことがあるかもしれません。妊娠すると歯が悪くなると思われているのはなぜでしょうか?
妊婦さんの口腔環境
妊娠すると体調やホルモンの変化に伴って、口腔環境にも変化が起こります。女性特有のエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが増加し、これらの女性ホルモンは歯周ポケットや唾液からでてくる体液と混在し、口腔内にも入り込みます。歯周病菌はこの女性ホルモンが大好物なのです。女性ホルモンの増加によって歯周病菌の活動が活発になり、歯肉に炎症がおこりやすくなります。また妊娠中は体内の免疫力低下が生じるため、歯肉などの口腔環境も悪化しやすくなります。さらに、つわりなどの影響で唾液の分泌量低下も生じるため、口の中が酸性になる傾向が強まります。その結果としてむし歯になりやすくなってしまったり、歯茎から出血したりといった様々な不快症状がおこってしまうのです。
妊婦さんはたいへんなのです
つわりがひどい妊婦さんは吐き気などで歯をしっかり磨くことが難しかったり、食事の時間が不規則になったりします。つわりの時は酸っぱいものを好んで食べる方も多く、口の中が酸性になり、むし歯菌の活動も活発になってしまいます。どうやら妊娠中に歯がわるくなるのは、おなかに赤ちゃんがいるためではなく、口腔内のお手入れがしにくい、妊婦さんの口腔環境の変化のためということになります。
ご存知でしょうか?妊婦さんの歯科健診
妊婦さん向けの妊婦歯科健診があるのをご存じでしょうか?歯肉の状態やむし歯の有無をチェックします。唾液を化学的に検査したり、正しい歯の磨き方のアドバイスを受けたり、気になることは出産前に相談しておきましょう。
妊婦歯科健診の費用は、自治体によって様々ですので、お住まいの地域に確認してみると良いでしょう。むし歯などの歯科治療は、つわりが過ぎて安定期に入ったころの妊娠中期頃が望ましいといわれています。
大切な赤ちゃんのためにも・・・
前述より、妊婦さんの口腔環境下では、むし歯菌や歯周病菌は活発になりやすく、むし歯や歯周病リスクが高まります。早産、低体重児出産との関連が示唆されるという報告もあります。生まれたての赤ちゃんのお口には、むし歯菌は存在しません。大人の唾液を介して、うつってしまうのです。赤ちゃんを守るため、愛情の裏返しにならぬように、一緒に生活する大人たちも口腔管理歯科治療しておくことが大切です。
おわりに
妊娠中に歯科受診することは、生まれてくる赤ちゃんのためにも重要なことです。通院しやすい歯科を受診すれば産後も親子で通いやすくなるでしょう。この機会にぜひご家族でかかりつけの歯医者さんをみつけてはいかがでしょうか。
■参考文献
出典:妊婦・授乳婦の歯科治療と薬物療法―安心で安全な処置・処方のために 砂書房;第2販(2010/12/1) 著者;藤井 彰
妊娠時の歯やお口のケア 日本歯科医師会より引用、改変
妊娠時の歯やお口のケア – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020 (jda.or.jp)
神奈川県歯科医師会・厚木歯科医師会会員
横田歯科医院 横田剛