学校歯科健診の結果をどう受け止めるか? 特に顎関節診査の「要観察」「要精検」について
- 執筆者
- 神奈川県歯科医師会会員・横浜市歯科医師会会員 荒木 敏哉
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2025/03/11
- 歯とお口の基礎知識
お子さまが持ち帰った学校歯科健診のお知らせで「要診断」「要精検」と判定されているのを見て、ご心配になられた保護者の方々もおられることでしょう。
今回は、学校歯科健診の結果をどう受け止め、対応するのがよいか、「顎関節の異常」の項目で「経過観察」とされている場合を含め、くわしくお話しいたします。
毎年1回児童・生徒の歯や口の健康診断を実施
学校歯科健康診断(学校歯科健診)とは、学校で毎年1回児童・生徒を対象に歯や口の状態、機能を把握するために行う健康診断のことです。
歯科医院で行う診断との違いは、歯や口に症状がない児童・生徒を含めて検査対象とし、現在病気にかかっている可能性があるか、将来病気にかかるリスクが高いのか、そうでないのかをふるいわける検査である点です。
こうした検査を「スクリーニング検査」と呼びます。
学校歯科検診の結果は、学校健康診断と同様に次の3段階で評価されます。
0 異常なし
1 要観察 定期的な観察が必要で、積極的な保健指導と予防と予防処置の組み合わせを行うことにより、疾病の状態に進行させないことが可能な段階。
2 要精検 医療機関により疾病の状態の診断を受け、臨床的な対応(診察や治療)が必要な段階。
あごの関節の状態や動きも確認
学校歯科健診では、むし歯、かみ合わせと歯並び、歯垢、歯肉炎などを含む口のなかの状態だけでなく、あごの関節(顎関節)の状態や動きも診査項目に含まれています。
このため、お子さまが顎関節の状態について「要診断」「要精検」という判定を受けた場合、どのように対応したらよいのか、不安や疑問を感じる保護者の皆さまも少なからずおられるようです。学校歯科健診における顎関節のスクリーニングとしての判定基準は、次の通りです。
0 異常なし 顎関節部の雑音、痛み、開口度(口を開ける大きさ)に異常が認められない状態。
児童・生徒の顎関節部に指を当て、2、3度口を開閉させます。開口度は、お子さまの指の横幅3本分(3横指)以上を目安とします。こうして、開口度、口をスムースに開閉できるか、雑音(クリック音、捻発音など)がないかを調べることが望ましいとされています。
しかし、実際にはこうした検査を学校歯科検診の限られた時間のなかですべての生徒に行うことは困難です。
このため、保護者の皆さまに事前に記入していただいた保健調査票を参考に、顎関節部に症状などの訴えがない場合は「異常なし」と判定している場合が多いのが実情です。
1 要観察 お子さまから、「開口時に下顎が斜めに開くことが多い」「顎関節に雑音を感じることがある」「ときどき口を開けにくい」といった訴えがある場合。
2 要精検 開口時に痛みがある場合、開口時に2横歯以下しか開けられない場合など。
顎関節の健診で「要精検」「要観察」と判定されたときの対応は?
学校歯科健診の結果、「要精検」と判定された場合は「歯・口の健康診断結果のお知らせ」をかかりつけの歯科医院などに持参し、早めに治療または相談を受けることが勧められます。
治療や相談のあと、歯科医師にこの用紙の「受診結果」欄などへの記入を依頼し、後日、学校に提出してください。
また、「要観察」というのは経過観察、ていねいな歯みがきや規則正しい生活習慣を心がけ、症状が出ないかどうか様子をみるということです。
その際、かかりつけ歯科医による継続的な指導・管理を受けられることも勧められます。
顎関節診査で「要観察」と判定される症状のほとんどは顎関節雑音であり、学童期の顎関節症状のなかではもっとも頻度が多いものです。
学童期の額関節雑音の半数以上は、積極的な治療をしなくても自然に消失するという統計もあります。
このため、そのまま様子をみてもよいのですが、口を開けにくくなったり、顎関節部に痛みを自覚するようになったりしたら歯科医院への受診をお勧めします。
「要観察」と判定されたときの生活習慣、食事、精神的サポート
学校歯科健診で顎関節に異常が認められ、「要観察」と判定された場合の注意点をまとめておきますので、ご参考になさってください。
1)生活習慣に関して
・顎関節部をあまり冷やさない
・うつぶせ寝を避ける
・ほおづえを止める
・コンタクトスポーツでの外傷は顎関節症を悪化させることもあり、マウスガードなどで予防に努める
・発声練習などで急に大きく口を開いたり、歯科診療で長時間大きく口を開いたりすると顎関節を痛める可能性があるので注意を要する
・管楽器の演奏時に顎を痛めることがあり、音楽活動を一時休止させる必要がある場合がある
・くいしばりを誘発するような過度の緊張を与えない
2)食事について
・片側で噛む癖は避けて、両側で噛むようにする
・痛みが出ている場合には硬いものを噛んだり、長い時間ものを噛んだりしないよう指導する
3)精神的サポート
・顎を鳴らして遊ぶ癖がある場合は止めるようにする
■参考文献
日本学校歯科医会「学校歯科医の活動指針」付録「学校歯科健康診断における歯列・咬合および顎関節の審査基準の見直し」
「学齢期の顎関節診断と対応」編集・安井利一、丸山進一郎 永末書店
- 執筆者情報
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荒木 敏哉神奈川県歯科医師会会員・横浜市歯科医師会会員