知っていますか?オーラルフレイル~口腔機能低下を防ぎましょう~

執筆者
神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員 吉田 大輔

人口の高齢化が進んでいる現在、健康意識の高まりや医療技術の進歩もあり「人生100年時代」といわれるように日本は世界の中でも有数の長寿大国となっています。誰もが人の手を借りずに健康で自立した生活ができる期間である健康寿命を延ばしたいと思うのは共通していることではないでしょうか。かかりつけ歯科医をもっていただき歯及び口腔の健康を良好に保つことは健康寿命の延伸に密接に関係しているのです。

「未病」という言葉をご存じでしょうか?私達の心身の状態は、「健康」か「病気」かという2つに分けられるのではなく、日々「健康」と「病気」の間を行ったり来たりしており、このような「健康」と「病気」の変化の過程を未病といいます。

「未病改善」とは特定の疾患の予防にとどまらず、日ごろから心身をより健康な状態に近づけていくことをいいます。歯科の分野でいえば、正しい歯磨きの方法を身につけたり、よく嚙んで食べることを心がけることも、未病改善につながる取組みです。

神奈川県では未病改善へ「食」と「運動」と「社会参加」の3つの取組を軸に進めています。

【食】毎日の食生活を見直し、健康的な食生活へ改善することが大切です。オーラルフレイル対策も重要です。

【運動】日常生活にスポーツや運動を取り入れることが大切です。質の良い睡眠も重要です。

【社会参加】ボランティアや趣味の活動等で他者と交流し、社会とのつながりを持つことが大切です。

「食」のところでお口に健康状態は密接に関係してきます。

皆様もご存じの「8020運動」、80歳で20本以上の歯を残すことでしっかり噛んで必要な栄養を摂り健康が保たれるのですが達成率は現在60%位と昔に比べて大分上がってきています。注意が必要なことはむし歯や歯周病の状態を放置したまま歯も含めて20本以上ということではなく健全でしっかり咀嚼することができるといった口腔機能をしっかり果たせる状態を維持していくことが重要です。

口腔機能とは元気で楽しい生活を送るために大切なお口の働きで、おいしく食べる、楽しく話す、呼吸をする、表情を豊かにする等の様々な役割があります。年齢を重ねるにつれてお口の機能が低下して今までの食生活が不自由になることがあります。

口腔機能を向上させる3大要素として

【歯科治療】
むし歯や歯周病の治療、入れ歯の作成調整等

【摂食・嚥下トレーニング】
発音練習、お口の健口体操、発生構音訓練、食事の姿勢等、神奈川県ではお口の健口体操としてグーパーグルグルゴックンべー体操を推奨しています。かながわ・健口体操で検索してください。動画等でやり方が確認できます。

【清潔に保つ】
うがい。歯磨き、入れ歯の清掃、口腔粘膜のケア、舌の清掃

があります。いずれも歯科医院にて歯科医師及び歯科衛生士等からの治療や指導が必要となります。

この口腔機能の低下につながる初期段階とされるオーラルフレイルへの理解が必要です。全身のフレイル予防の為のオーラルフレイル対策が重要です。

高齢になり心身の機能や活力が衰え、虚弱になった状態を「フレイル」といいます。フレイルは健康と要介護状態の中間の状態であり要介護になる危険性が高まるだけでなく、健康長寿を達成できる割合が低くなるといわれています。

「オーラルフレイル」とは直訳するとお口の機能の虚弱となります。お口に関する些細な衰えを放置したり、適切な対応がなされないとお口の機能低下や食べる機能の障害、さらには心身の機能低下にまで陥ってしまう為に警鐘を鳴らす目的で提唱されたのです。具体的には次の6項目が介護リスクを高める危険なお口の衰えとなるので注意が必要です

①自分の歯が20本未満
②滑舌の低下
③噛む力が弱い
④舌の力が弱い
⑤半年前と比べて硬いものが噛みにくくなった
⑥お茶や汁物でむせることがある

このような症状に複数該当する場合は歯科医院を受診していただき口腔機能低下症という病名のもと専用の検査機器で検査し結果に基づいた改善プログラムの指導を受けてください。的確に実施することにより健康な状態に戻していくことが可能です。

~健康寿命延伸に必要なこと~

・オーラルフレイルに関する些細なお口の衰えを見逃さない
・健康長寿に必要な3つの柱、食・運動・社会参加等のフレイル対策を理解しお口の健康を維持することが全身の健康に直結して要介護状態を避けることができる
・口腔機能を低下させずしっかり噛んで栄養をとり筋力低下を予防することが大事、歯磨き等に加えてお口の健口体操も日常に取り入れましょう。
・かかりつけ歯科医をもち定期的に歯科受診

することがとても重要です。

まだかかりつけ歯科医をお持ちでない方は本HPよりお近くの歯科医院を検索いただきお気軽に歯科健診を受けていただきますようお願い致します。

(参考文献:オーラルフレイルハンドブック神奈川県歯科医師会作成)

 

執筆者情報
吉田 大輔
神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
よしだ歯科クリニック

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