顎関節症 次のような症状で困ったことはありませんか?

執筆者
神奈川県歯科医師会会員 横浜市歯科医師会会員 真下 純一

●あごの関節の音がする(口の開け閉めの際、カックン、コッキンというような音がする)

●口が開かなくなった

●あごが痛い

実は、顎関節症が疑われます。硬いものを食べたり、無理に大きく口を開けたりしないようにしましょう。 痛みがあり、口がスムーズに開きにくくなった場合は口腔外科での受診をお勧めします。

 

顎関節症

顎は微妙に入り組んだ形と複雑な機能を持っています。顎関節は、下顎骨と頭蓋骨をつなぐ蝶番のような役割を果たしており、口を開け閉めしたり、噛んだりする動作に重要な役割を担っています。ここには筋肉と関節と神経が集中し、下の顎を支えていて食事や、話すときに連動して動きます。顎関節や周囲の筋肉に何かの原因で痛みや動きにくくなるのが顎関節症です。

最近、あごの関節の不快感を訴える方が増えてきました。あごが思い通りに動かず、食べ物が噛みにくい。あごを動かすと不快な音がする。痛みを感じて口が開かない。さらに症状は顎ばかりでなく、肩こりとか、腕や指のしびれ、偏頭痛、耳や鼻にも不快感を覚えることもあります。このように症状は広範囲にわたり、人によっては軽い症状から重い症状まで、個人差が大きいのが特徴です。顎関節症の多くは適切な対処で、日常生活に支障をきたすことがない状態に改善することが多いですが、重い症状の場合は放置するとまれに症状が進行することもあります。症状があれば早めの診察をお勧めします。

 

関節症の代表的な症状

●顎関節やその周辺に異常を感じる

●食べ物を噛む時に痛みや異常を感じる

●食事をしているとあごがだるい

●口を動かすと顎関節に痛みがある

●噛みしめると顎関節が痛い

●口を開けたり閉じたりする時に顎関節でカックン、コッキンというような音がする

●口が開けにくい、口の開閉をスムーズに行うことができない

●口が左右にうまく動かない、開けにくい、あごが外れることがある

以上の症状のうち少なくとも一つ以上があるとき顎関節症の可能性が疑われます。症状は悪くなったり良くなったりをくりかえします。再発することもありますが、あまり心配しなくてよいケースが多いです。また生活習慣の改善で病状は軽減されます

 

顎関節症が原因と見られる副症状とは?

代表的な症状以外にも、顎関節周辺だけでなく全身の様々な部位に症状が現れることもあります。

●頭痛・首や肩の痛み: 顎の筋肉や関節の緊張が原因で頭痛や首、肩に痛みが出る

●耳の違和感: 耳鳴りや耳の奥の痛みが伴う

これらすべてが顎関節症によるものとは限りませんが、専門医による診断をお勧めします。

 

顎関節症の原因

いろいろな原因が考えられていますが、上顎と下顎の不調和による場合が多いようです。また精神的緊張やストレスがあごの周りの筋肉を緊張させ噛み合わせがアンバラスになり、無理な力が関節にかかり顎関節に負担をかけることもあります。歯ぎしりも顎関節に大きな負担をかけます。さらに全身的問題、例えば生まれつき関節に問題のある人や、関節に外傷を受けたことがあるかどうかなどが原因となることもあります。このように顎関節症の誘因としては原因が1つだけではなく、複数の原因が微妙にからみあっていろいろな症状がでることが多いです。顎関節症の原因はいまだに不明な点が多く残っているのが現状です。

 

一般的に言われる原因は

急激なストレス(精神的なストレス・緊張が、無意識に筋肉を緊張させます)

歯ギシリ・食いしばり(夜間の歯ぎしりや何かに熱中して緊張することで強くくいしばり、顎関節やその周囲に負担がかかります)

唇や頬の内側をかむ癖がある

頬杖、うつ伏せ寝、不良姿勢(例 : 猫背)

顔面打撲や事故による外傷(顎や顔への外部からの衝撃が原因となることがあります)

入れ歯や歯にかぶせたものが合っていない(悪い噛み合わせ)

大口を開けたり、硬いものを頻繁に噛んだ(アゴの酷使)

左右どちらか一方でばかり噛む癖がある(片咀嚼)

うつ、不安因子がある 、睡眠障害(ストレスで夜よく眠れない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顎関節症の治療法

顎関節症の治療は、症状や原因に応じて異なりますが、一般的には以下の方法が用いられます。

●保存療法: 安静にする、痛み止めや抗炎症薬を使用する、温熱療法やマッサージを行うなどの対処法

●マウスピース: 歯ぎしりや食いしばりを防ぐため、夜間、上顎あるいは下顎にマウスピース(スプリント)を装着し、上下顎の噛み合わせが均等になるようにします。そうすると顎の関節頭が正しい位置に戻り、筋肉の緊張がとれ、スムーズに動かすことができるようになります

●理学療法: 顎関節周囲の筋肉をリラックスさせ、関節の動きを改善するためのリハビリやストレッチをおこなう

●科治療: 咬み合わせの調整や、歯の治療が必要な場合があります。入れ歯やクラウン(かぶせ物)などの歯科治療で、噛み合わせの関係を治します

●手術: 重症の場合には、関節鏡手術や関節置換などの外科的手術が行われることがあります。手術適応症例は稀です。

 

顎関節症の自分でできる管理方法(予防)

歯ぎしりや食いしばりの対策(マウスピースの使用やリラクゼーション法)

適切な噛み合わせの維持

ストレス管理や適度な休息

顎関節に過度な負担をかけない生活習慣の改善(硬いものを避ける、長時間の口の開閉を避ける)

 

顎関節症は多くの場合、軽度で自然に改善することもありますが、痛みが続く場合や日常生活に支障が出る場合は、専門医に相談することが重要です。顎関節や筋に痛みがあるときはまず安静にしましょう。そして症状を悪化させないために大口を開けることや顎の使いすぎに気をつけましょう。

症状があるときは次の点に気をつけて生活習慣の改善をはかりましょう。

おかゆ、やわらかいそば、うどん、パスタなど噛まなくてよい食事をとりましょう。硬いものは避けましょう。(ガム、フランスパンの皮、硬い肉など)

顔の筋肉をやわらげ、目を閉じ、軽く上下の唇を触れさせ、歯を接触させないようにしましょう。大きなあくびや長時間の歯科治療は避けましょう。仰臥寝(あおむけね)と低い枕を使用しましょう。うつぶせ寝はしてはいけません。同じ姿勢を長く続ける事を避け、時々はストレッチをして心身を休めましょう。また猫背や顎を突き出すような姿勢をとらないようにしましょう。首の牽引、頬杖をしないようにしましょう。以上の点に気をつけて生活習慣の改善をはかりましょう。

 

引用文献

日本口腔外科学会HP  https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/gaku/itai/

執筆者情報
真下 純一
神奈川県歯科医師会会員 横浜市歯科医師会会員
ファミーユデンタルクリニック

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