健やかライフはお口から ―意外に大事な壮年期―

執筆者
神奈川県歯科医師会・川崎市歯科医師会会員 寺澤 孝興

今回は仕事や家庭のことで忙しい壮年期の人にスポットを当ててお話しさせていただきます。

 

健やかな生活は口腔の健康にある

「歯科疾患」と「全身疾患」の関連性が取りざたされてから長い月日がたっておりますが、世界保健機構(WHO)・世界保健デイでも「口腔保健」がメインテーマとしてあげられるなど「健やかな生活は口腔の健康にある」ことは世界の共通認識です。

口腔保健は、一生涯にわたって継続する必要があります。

妊産婦歯科健診にはじまり、乳幼児歯科健診(一歳六ヶ月児、三歳六ヶ月)、保育園や幼稚園の歯科健診(就学時歯科健診を含む)、学童期の学校歯科健診と続き、健診ではむし歯の有無だけでなく、口腔機能発育状況や食生活習慣指導などが自治体を中心に行われています。また、老年期においては、「地域包括支援センター」における口腔衛生管理プログラムが充実してきており、生活習慣病の問題が無く元気に生活している人が増えてきました。

一方で、生活習慣病や全身疾患により寝たきりで要介護状態であるなど、十分な歯科治療(訪問診療で対応)を受けられない方がいらっしゃるという事実もあります。

このような差はなぜ起こると思いますか?

最近では、壮年期に「お口の健康にどれだけ気を配れたか?」が原因であることが解ってきました。そのため、ここでは壮年期のお口の状態や関わり方について話を進めていきたいと思います。

 

壮年期の口腔状態は老後の全身の健康に影響があります

壮年期は、「お口の健康状態に大きな個人差が出る時期」「歯科疾患の多くが起こりうる時期」ということです。生まれてから現在に至るまでに、いかにお口の健康状態を気にかけていたかが結果として現れてくる時期です。「むし歯」「歯髄炎(神経の炎症))「感染根管(根の細菌感染)」「顎関節症と顎のズレによる身体異常」「歯周病」など様々な歯科疾患が起こります。

お口の健康を保つために、まだ問題が起きていない方は「予防」が、すでに問題を抱えている方は「治療と再発防止」が大事になります。しかしながら、個人差の大きい時期ですので個別の対応が必要となります。

お口の健康を保つには

「お口の健康」を保つために重要なポイントは何か?これは「早期発見、即時かつ徹底した治療」につきると思います。問題を放置すれば、その問題は急激に悪化します。問題を早期に発見しすぐに治療をする、これがご自身の「お口の健康」を保つ秘訣です。

「早く治療した方が良いことは、わかっているけど…」と言った話をよく耳にします。仕事が忙しい、歯医者が苦手、どこに行けば良いかわからないなどの理由で行動に移せない方も多いと思います。しかしながら、放置した時間に比例して治療は難しくなります。是非とも早めの行動を心がけてほしいものです。そして、治療を行う場合は徹底して行うことが大事です。

 

歯科疾患の多くが自然治癒することがない

むし歯や咬み合わせの問題などはほとんど自然に治癒することはなく、治療の手を加える必要があります。どちらかと言えば自然治癒力の影響が大きい歯周病でも、歯石除去などの処置が必要で、進行すると歯磨きや食生活など生活習慣の改善だけでは治すことが出来なくなります。病状が進行した場合には、徹底的に治療しなければ問題を解決出来ないのが歯科疾患の特徴です。

繰り返しになりますが、忙しくて「痛くないからいいだろう…」と歯科受診を先延ばす。その場限りの治療を繰り返す事で、お口の中にたくさんの矛盾点や問題点を抱える壮年期の方が非常に多くいらっしゃいます。そのまま老年期を迎えると、お口の健康にトラブルがあっても健康上の問題で、歯科医院へ通院できない。根本的な歯科治療が行えないケースが増えていきます。

 

60歳までにお口の総点検をしよう!

一つの目安ですが、60歳前後は体力に余裕があり治療の時間が十分取れる環境になっている方が多いように思われます。お口の問題を相談できる「歯科医」を見つけ、お口の総点検と徹底した治療を行い、その後の人生を充実して送れるよう万全の準備をしてください。

「お口の健康」を維持するためには、「60歳までにお口の総点検をしよう!」を合言葉に「かかりつけ歯科医」と関わりを持ってほしいと思います。

参考文献

「みんなのための家庭の歯学」 西村書店 青木博之 著

 

 

執筆者情報
寺澤 孝興
神奈川県歯科医師会・川崎市歯科医師会会員
リバーク歯科

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