歯を失ってしまう原因とは?
- 執筆者
- 神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員 大屋 学
- 2024/06/21
- 歯とお口の基礎知識
「歯を失う」。
このことを、普段から意識して生活されている方はあまりいないと思います。
私たち人間が生きていくためには、言うまでもなく食べることが必要です。食べることが私たちを支えています。
食べるためになくてはならない器官が“歯”。ところが、歯の寿命は、長くなった日本人の平均寿命に追いついていません。
そして様々な理由で歯を失うことがあるのです。
その原因についてお話しします。
では、歯を失う原因をご説明します。
3大原因は歯周病、むし歯、破折(歯が欠けた・割れた状態)です。
歯を失ってしまう主な原因は3つあります。
ひとつひとつご説明していきましょう。
歯を失ってしまう理由その1:「歯周病」
歯を失う原因、最初は「歯周病」。
口の中の細菌によって、歯の周りを支えている歯ぐきや骨といった歯周組織が壊されていくのが歯周病です。あまり自覚症状のないうちに破壊されていきます。そのうちに「噛むと痛い、血が出る、膿が出る」のような自覚症状が出て来て、気づいたころには歯があまり持たず最終的には抜かなくてはいけない状態になってしまいます。
歯を失ってしまう理由その2:「むし歯」
歯を失う原因、2つ目は「むし歯」です。
むし歯の原因には「細菌(ミュータンス菌)」「糖質」「歯の質」の3つの要素があります。この3つの要素が重なると、時間の経過とともにむし歯が発生します。ちなみに、細菌は歯ブラシで皆さんが取っている歯垢の中身になります。
磨き残しなどがあり、歯の表面にバイオフィルム(細菌が作った膜)が形成されそこに糖質が来て酸が出来ると、歯の表面から溶けてきます。
歯科医として検診のときに初期むし歯を見つけることがありますが、そうしたときに患者さんがよくおっしゃるのは、「痛くなかったのに・・・」と言う言葉です。しかし、むし歯で歯が痛くなるのは、実際には、かなり深いところまでむし歯が到達した時なのです。
ところが、そうした状態をしばらく放置していると、そのうちに神経が壊死して今度は痛みを感じなくなってしまいます。中には「痛くないから」と、そのままにされる方もいらっしゃいます。その間も歯はどんどん溶けていくため、いざ歯科医院にいらしたときは歯が大きく崩壊しておりかぶせて治すことも出来ず、抜かなくてはいけない状態になってしまいます。
歯を失ってしまう理由その3:「破折」
そして3つ目の歯を失う理由、それは「破折」です。
破折とは、名の通り歯の根が折れたり、割れたりした状態のことを指します。割れ方に応じて、水平破折、垂直破折などがあります。
歯根破折の大きな原因は、物理的な圧力です。
歯は、エナメル質、象牙質などいくつもの層によって頑丈に保護されており、もともとは耐久力があります。しかしその許容範囲を超える力が加わると、歯の根もとから折れてしまいます。
転倒などの事故で、1回の圧力だけでも破折が起きることもあります。
そうした突発的な場合ではなく、日常生活での積み重ねが破折につながるケースもあります。歯ぎしりやかみ合わせの異常などが長年続いたままになると、歯に継続して圧力が加わっていくことで長期的に亀裂が入っていき、知らず知らずのうちに破折のリスクが高まってしまうこともあります。
他にも、むし歯治療で歯の神経を抜いた場合や、大きなむし歯などによって歯の構造が薄くなってしまった場合でも、破折を起こしやすくなります。
破折の向きによって、対応の仕方も違ってきます。
垂直に割れている場合は、細菌の進入路になり感染のリスクが高く、かぶせるなどの処置も不可能なため抜歯することになります。
いっぽう、水平に破折が起きている場合、上の方での破折であれば残せるときもありますが、歯茎の中のほうまで割れているときは抜歯になることもあります。
破折は放置すると細菌繁殖の温床となり、腫れたり引いたりを繰り返して歯の周りの顎の骨を溶かしたり、さまざまな感染症の原因になります。必ず歯科医師の治療を受けるようにしてください。
終わりに
歯を失う原因の多くはむし歯や歯周病といわれていますが、歯根破折が原因になることもあります。お口の中の問題は、痛みが出たころには大事でもとに戻せない、もしくは時間も費用もかかって直していかなくてはいけなくなってしまいます。そのようなことを防ぐために、痛くなってから痛みを取るために歯科医院を受診されるのではなく、痛くなる前に問題が起きないように歯科医院を受診されることをお勧めします。
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大屋 学神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
ベルウェルネス歯科 青葉台