あごの関節に痛みがあるとき

何科を受診するか

皆さんは、食事や会話、カラオケ、あくびなどで口を大きく開け閉めしたとき、あごの関節(顎関節:がくかんせつ)がコキコキと音を立てることはありませんか。
特に痛みなどがなければ放置してしまいがちですが、放っておくと「口が開かなくなった」「無理に開けると痛い」「あごだけでなく耳や頭まで痛い」といったことにもなりかねません。
今回は、このようなお悩みをおもちの皆さんに、症状が起こるメカニズムと治療法、何科を受診すればよいかなどについてお話しします。

あごの関節がコキコキ鳴る、痛みで口が開けにくい

先述のような症状が起こる原因の1つには、「顎関節症(がくかんせつしょう)」が考えられます。
顎関節症として一般的に認識されている症状は、あごの関節や耳の前方に痛みや不快感があったり、口が開けにくかったり、あごを動かしたときに雑音を発したり、頭痛が起きたりすることです。

人間のあごの関節は、下顎骨(かがくこつ)と側頭骨(そくとうこつ)の間に形成されています。下顎骨は左右にまたがっている骨ですので、口の開閉時には左右の顎関節が一対となって同時に動くということになります。
からだのさまざまな部位に関節がありますが、左右一対になって同時に動く関節は、この顎関節だけです。
下顎骨と側頭骨のつなぎ目には、関節腔(下顎窩:かがくか)というわずかな隙間があります。関節腔には、骨と骨が直接ぶつからないようにクッションの役割をはたす、関節円板といわれる軟骨のような組織が存在しています(図)。

噛みあわせが悪い、くいしばりの癖がある、下向きに寝る習慣があるといった理由で関節腔が狭くなると、関節円板が本来のクッションの役割を果たせず、骨にぶつかるようになってコキコキと異音を立てることになります。
異音だけしているうちは特に痛みもなく日常生活に支障はないため、そのまま放置してしまうことが多いのですが、さらに関節腔が狭小化していくと関節円板が押しつぶされて前方に移動(転位)し、関節の動きを阻害するようになります。
口が開かなくなった、無理に開けると痛いという症状が起こるのはこのためで、顎関節症の典型的な進行パターンといえます。

    図 顎関節症に関係する部位

口腔外科を標榜する医療機関に相談を

こうした症状に悩む患者さんが迷われるのは、いったいどの診療科を受診すればよいかということです。
顎関節症が進行すると、耳まで痛くなることもあります。このため、耳に問題があるのではないかと考え、耳鼻科を受診した患者さんが「問題なし」とされることも少なくありません。

顎関節症は、歯科のなかでも「口腔外科」と呼ばれる専門分野の対象疾患です。
このため、先述のような症状にお悩みの皆さんは、口腔外科を標榜している歯科医院や大学病院をかかりつけの歯科医師に紹介してもらったり直接受診したりして、専門の歯科医師に相談してみるとよいと思います。

口腔外科を標榜する医療機関を受診し、顎関節専用の特殊なレントゲン写真などで関節腔の狭小化を確認できれば治療の対象ということになります。
顎関節症の治療は、まず関節腔を広げて前方転位している関節円板を元の位置に戻し、正しく口が開けるようにすることを目標にします。そのため、口の歯形をとりマウスピース(スプリント)を作成します。スプリントは基本的に就寝時に装着します。

このほか、患者さんご自身であごのストレッチを行って関節腔を広げる自己牽引療法、顎関節周囲の筋肉のコリを緩和するマッサージ療法などがあります。

担当の先生と十分相談され、さまざまな選択肢のなかからご自分にもっともふさわしい治療法を選択していただきたいと思います。

神奈川県歯科医師会・相模原市歯科医師会 会員
ふるかわ歯科クリニック 古川信也

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

もくじ