むし歯の母子感染の予防と口腔ケア
- 2021/11/09
- 歯とお口の基礎知識
4月27日(月)放送のテレビ神奈川「猫のひたいほどワイド」内、「健康!歯っピーライフ」のコーナーの紹介です。
このコーナーは、歯やお口の健康に関する情報をtvk岡村アナウンサーと神奈川県歯科医師会川原広報委員が伝える月に1回のコーナーです。
4月のテーマはむし歯の母子感染の予防と口腔ケア」でした。
赤ちゃんをむし歯感染のリスクから守るために
むし歯は、ミュータンス菌を代表とするむし歯の原因菌(以下むし歯菌)が引き起こす細菌感染症です。
生まれたばかりの赤ちゃんには、むし歯菌はいません。
歯が生えてから周りの大人や兄弟などから感染します。
むし歯の母子感染とありますが、周りにいる人たち全てからむし歯菌が感染するリスクはあります。
【豆知識クイズ】
1.生後1ヶ月ごろ
2.生後6ヶ月ごろ
3.生後12ヶ月ごろ
3.生後6ヶ月ごろ です
赤ちゃんの乳歯は、下の前歯から生えることが多いです。乳歯の本数は20本です。生後6ヶ月〜3歳くらいで乳歯が生えそろいます。
赤ちゃんをむし歯感染のリスクから守るために、赤ちゃんの歯が生え始める前からご家族皆さんでむし歯の予防対策に取り組んでみて下さい。
むし歯は、歯の表面がむし歯菌の出す酸によって溶かされることで生じます。むし歯の原因は1つではなく4つの要素が関わり合っています。赤ちゃんをむし歯のリスクから守るためにそれぞれの要素において対策があります。
むし歯の原因と対策
1つ目の要素はむし歯菌です。
むし歯菌は歯が生えてから感染するので、歯が生え始める前から、周りの皆さんのお口の中を清潔にしてむし歯菌を少なくしましょう。
むし歯菌を減らすということは歯垢を取り除くことです。歯垢の中にむし歯菌も存在します。ネバネバの歯垢は、口をゆすぐだけでは取れません。歯ブラシで、歯垢をこすり取ることが基本です。
歯垢が石灰化して硬くなってしまうと、歯ブラシでは取れないため、歯医者さんで歯石を取る必要があります。また、赤ちゃんとむし歯菌を保有している人が食器を共有すると、むし歯菌が赤ちゃんへと感染してしまうため、スプーンなどは一緒に使わない方が良いです。
2つ目の要素は、歯の質と唾液の質・量です。生えたて歯は、軟らかくむし歯になりやすい状態です。歯が生えてきたら、フッ化物を塗ることで歯の質をむし歯になりにくくすることが可能です。適切なフッ化物の濃度がありますので、歯が生えてきたら歯医者さんに相談をすると良いでしょう。また、フッ化物には歯垢の細菌に対しても酸を作るのを抑制する効果もある*1ため、成人に対しての効果も期待できます。唾液の質・量もむし歯のなりやすさに関係があります。唾液には抗菌作用があります。さらに唾液には緩衝作用といって、むし歯菌が出した酸によって歯垢中のpHが酸性に傾いてしまっている状態を戻してくれる効果があります。唾液の量が多い方が、むし歯のリスクは低いので、よく咬んで食べることが大切です。口呼吸もお口が乾燥する原因となるので、お口ポカンの癖は直せると良いですね。
3つ目の要素は、糖です。むし歯菌は食物や飲み物に含まれる糖から酸を産生します。
ジュースやスポーツドリンクにも砂糖が多く含まれます。食物以外の糖分にも注意が必要です。
炭酸飲料水500mlの中には50gもの砂糖が入っているものもあります。
代用甘味料を上手く利用することも、むし歯予防に効果があります。
代表的な代用甘味料はキシリトールです。
キシリトールは糖に似た化学的構造式を持ち、むし歯菌も栄養だと勘違いをしてキシリトールを取り込みますが、糖ではないため、むし歯菌は飢餓状態になり死滅します。キシリトール入りのガムやタブレットなどが販売されています。むし歯菌を減らすために、赤ちゃんの周りの人たちがキシリトールを活用することが良いです。
赤ちゃん自身は、ガムやタブレットは食べられないので、キシリトールの活用時期に関しては歯医者さんとご相談ください。
4つ目の要素は、時間です。不規則な食生活を行うと、むし歯菌により作られた酸に歯がさらされている時間が長くなり、歯が溶けやすくなってしまいます。食事とおやつの時間は決めてダラダラ食べ、ダラダラ飲みは控えましょう。
以上のことに気をつけて、皆さんでむし歯予防に取り組んでみてください。
参考
*1 奥田克爾(2004)口腔内バイオフィルム デンタルプラーク細菌との戦い 医歯薬出版株式会社