知覚過敏への歯科医師の対応

患者さんに知っていただきたいポイント

冷たい飲食物や歯ブラシの毛先などが歯に触れたとき、しみたり痛んだりする知覚過敏。専門用語では、「象牙質知覚過敏症:Hypersensitive Dentin(以下、知覚過敏)」といいます。
寒い時季には水温も低くなり、知覚過敏を訴えて歯科医院を受診される患者さんが増えます。通常、知覚過敏の症状は30秒以内に消失しますが、重症、難治性のものもあります。そこで、今回は知覚過敏の原因、症状が起こるメカニズム、予防、歯科での治療、再発防止などについて、少し詳しくお話します。

知覚過敏の原因

知覚過敏の原因には、歯周病、虫歯、誤ったブラッシングによる象牙質の露出、酸蝕症、ホワイトニングの薬剤による刺激などが考えられます。酸蝕症とは、酸によって歯のエナメル質が溶けた状態を指しますが、外因性の原因としては酸性飲食物の過剰摂取が挙げられます。歯のエナメル質は、一般の方々が考えている以上にもろいもので、pH5.5以下の酸性飲食物に長時間触れると溶けてしまうことがあるのです。このような酸性飲食物の例としては、コーラなどの炭酸飲料、ハイボールやビール、ワインなどのアルコール飲料、ドリンク剤、かんきつ類、ドレッシング、ポン酢などがあります。
意外なことに、歯みがき剤のなかにもpH5.5を下回るものがあります。また、歯科治療で神経(歯髄)のある歯を修復する際、かぶせ物をよい状態で入れられるように、歯を削ったり整えたりする処置によって知覚過敏が起こることもあります。
一方、根管治療などで神経をとった歯であるにもかかわらず、患者さんが「歯がしみる」と訴えることがあります。本来、歯髄がないので歯がしみるはずはないので、根尖性歯周炎など、ほかの病気がかかわっている可能性があります。このように、知覚過敏という症状を生じる原因は1つであることもあれば、いくつか重複していることもあります。

知覚過敏が発生するメカニズム(発症機序)

知覚過敏は、エナメル質やセメント質で覆われている象牙質が、何らかの原因により口の中に露出することで起こります。
象牙質は、歯髓からエナメル質に向かって細い管(象牙細管)が無数に通っています。象牙細管の中には歯髓から細い神経細胞の枝が伸びており、その周囲には細管内組織液が満たされています。そのため、露出した象牙質に刺激が加わると神経細胞が反応し、しみたり痛みが起こったりすると考えられています。

患者さんに心がけていただきたいこと

まず大切なことは知覚過敏かどうか鑑別診断することです。症状が起きる原因が歯髄炎など、ほかの病気でないことを確認する必要があります。知覚過敏の場合、しみたり、痛んだりする時間は、通常30秒以内の一過性であることが一般的です。
前述のような知覚過敏の原因―誤ったブラッシング、不適切な噛み合わせの癖、酸性飲食物の過剰摂取や習慣的摂取などーを是正する必要があります。例えば歯ブラシを使うときは、強く歯に押し付けないようにすることが大切です。適正なブラッシング圧は、150g~200gといわれています。これは歯ブラシを歯に当てたときに毛先が広がらない程度の力です。ペンを持つように歯ブラシを握って歯に軽く当て、やさしく小きざみにブラッシングするようにしてください。

歯科医院で行う治療の3つのアプローチ

知覚過敏に対し、歯科医院では1) 象牙細管を封鎖する、2) 痛みに対する閾値を上げる(感覚を鈍麻する)、3) たんぱく質を凝固させ、細管内組織液が動かないようにするといった3つのアプローチで治療を行います。

Ⅰ 象牙細管を封鎖する
薬剤などにより析出させた結晶物、あるいはレジン系、グラスアイオノマー系材料などで象牙細管口を閉鎖する。
Ⅱ 痛みに対する閾値を上げる(感覚を鈍麻する)
硝酸カリウムなどの薬剤や組織透過型レーザーの低レベルレーザー治療などにより、神経繊維や象牙芽細胞の感覚を鈍麻する。
Ⅲ 細管内組織液が動かないようにする
グルタールアルデヒドやHEMAなどの薬剤や組織表面吸収型レーザーなどで細管内組織液を凝固する。

以上、知覚過敏についてご説明をいたしました。一言で知覚過敏と言っても、原因や症状、最適な治療方法は患者さんによって様々であることがおわかり頂けましたでしょうか?
知覚過敏?と思った時には、先ずはかかりつけの先生にご相談下さい。それが解決への一番の近道となります。

■参考文献

第3版 象牙質知覚過敏症 目からウロコのパーフェクト治療ガイド 医歯薬出版

神奈川県歯科医師会・相模原市歯科医師会会員
山田歯科医院 山田晴樹

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