入れ歯の正しいケアを習慣に!
間違ったお手入れをしていないか、確認しましょう
- 2023/02/07
- 歯とお口の基礎知識
厚生労働省が行なった「平成28年歯科疾患実態調査」の結果、60代前半の国民のおよそ5人に1人が入れ歯を使用しており、年齢が上がるとともに使用率が上がることがわかりました1)。
むし歯や歯周病、事故などで歯を失ったとき、歯医者さんでご自分のお口のかたちや歯ならびに合った入れ歯をつけ、正しくお手入れをして使うことは、よりよい食生活を送り、健康寿命をのばすうえでとても大切な心がけです。
ここでは、入れ歯のケアについて、患者さんからよくいただくご質問にお答えすることにしましょう。
毎食後、専用のブラシと洗浄剤でやさしくていねいに!
入れ歯は朝昼夕の毎食後、間食をしたなら間食後も洗っていただくのが理想的です。
食後に洗い忘れたら、次の食事のあとに倍ぐらいの時間と手間をかけて、ていねいに洗っていただく必要があります。
入れ歯を洗うときは、入れ歯専用のブラシと洗浄剤、または中性洗剤や泡状のハンドソープを使用すると効果的です(図1・2)。
歯をみがくときのように、歯ブラシに歯みがき粉をつけて入れ歯を洗っている方がおられます。
しかし、歯みがき粉は研磨剤を含んでおり、歯ブラシでゴシゴシこすってしまうと入れ歯を傷つけることになります。
入れ歯専用ブラシを入れ歯の表面や内側にやわらかく当てて動かし、ていねいに洗ってください。
部分入れ歯をお使いの方は、バネのまわりや裏側もていねいに洗いましょう。細かい部分をきれいにするため、小さなブラシや綿棒などを使用するのもおススメです(図3・4)。
もちろん、部分入れ歯を洗うだけではなく、お口のなかに残ったご自分の歯もよくみがくこともお忘れなく。
寝るときははずして義歯洗浄剤に浸しておくのがおススメです
朝から夜までずっと入れ歯を装着していた場合、入れ歯が乗る歯ぐきの土手の部分やバネがかかる歯を休めるため、寝るときにははずしておいたほうがよいでしょう2)。
ただ、入れ歯をはずすと歯ぐきの土手の部分や歯、あごの関節に痛みが生じるという場合、着けたままお休みになるようお勧めすることもあります。
このような場合は、かかりつけの歯科医師にご相談いただければと思います。
義歯洗浄剤について聞かれることも多いのですが、私は「ぜひ、使ってください」とお勧めしています。寝る前にはずした入れ歯を洗浄剤に浸しておくことで、入れ歯をより清潔に保つことができます(図5)。
当然のことですが、入れ歯は洗浄剤にひたす前に必ずきれいに洗ってください。
全身の健康はお口から。入れ歯の正しいお手入れを習慣にし、健康寿命を延ばして生活を楽しんでいただければ幸いです。
■参考文献
1) 厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査結果の概要
2) 公益社団法人日本補綴歯科学会 有床義歯補綴診療のガイドライン(2009改訂版)
神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
神奈川歯科大学附属横浜クリニック 院長 井野 智、岩下 英夫