「マウスピース矯正で治ることと治らない事」
- 2023/05/01
- 歯とお口の基礎知識
この記事の目次
マウスピース矯正で治るところ
結論から先に言いますが、マウスピース単独での矯正治療の場合、歯は並べられます。
ただし、かみ合わせまではきちんと治せない事が多いです。また、横顔の美しさの改善までは難しいでしょう。
マウスピース矯正には適応症が限られます。適応外の患者さんにマウスピース装置を用いた場合は、患者さんが希望された状態まで到達できないことがありますので、自己診断せずに先ずは矯正歯科を受診されることをお勧めします。
マウスピース矯正を選ぶかブラケット矯正を選ぶか?
矯正治療では、患者さんの状態を診査、分析して不正咬合の診断を行った後に治療のゴールを定めて、そのための治療方法(抜歯・非抜歯)矯正装置を歯科医師が処方します。つまり患者さんがマウスピースでの治療を希望されても適応外と診断される場合があります。
歯科医院によってマウスピース矯正の適応基準は違う
現状として、先生によってマウスピース矯正の適応範囲は違います。
例えば
「上あごの前歯の歯並びだけ整えたい」ことを主訴とし、
「前歯部にごくわずかの凸凹がある」
「部分矯正、マウスピース矯正、非抜歯治療」
気になる部分だけを治したい患者さんがいたとします。
精密検査の結果、
「歯並びだけで無く、かみあわせも悪く、将来歯が失われるリスクが見つかった」場合に、
考えられる治療としては
・ごくわずかの上あごの前歯の凸凹 →マウスピース矯正適応可能
・咬み合わせの不具合 → マウスピース矯正は適応外でブラケット矯正が適応
それを踏まえて、
①主訴の治療のみを行う先生(マウスピース矯正を適応し、凸凹の改善だけを行う)
②かみ合わせまで治せる治療を提案する先生(ブラケット矯正、抜歯の場合もある)
③治療自体を引き受けない先生
の3パターンがあると思います。
先生がどのような意図でご提案されているのかをよく推察し、ご自分の希望と合っているかどうかを検討された方が良いでしょう。
マウスピース矯正にもいろいろな種類があります
通院が不要で、患者さんの都合でいつでも辞められるといったものから、矯正歯科医による診断に基づいて設計されるものまで様々です。患者さんはご自身でしっかりと勉強してから選択して下さい。ご自身で判断がつかない場合は、矯正歯科を受診して矯正相談(数千円)を受けて下さい。医療といえども、資本主義経済の影響はうけていますので、「簡単で、低価格で、効果が高い」ものは存在しません。安心安全な治療をもとめられる患者さんは歯科医院へ通院して下さい。審美も機能も妥協したくない患者さんも同様です。
マウスピース矯正が上手くいかなかった時に歯科医師は責任をとってくれるか?
・矯正歯科にて診査診断していた場合は、ブラケットによる治療への変更を提案(追加費用はかかります)があるでしょう。あるいは予め治療契約の時点からブラケット装置への変更・併用をご提案されているはずです。
・別の医院で再矯正治療を希望される場合には、100%の費用が別途かかります。
・セルフタイプのマウスピース矯正装置による治療が上手くいかなかった場合には、誠に申し上げにくいのですが、「自己責任」となることが多いでしょう。
大切なことなので繰り返します。きちんと勉強してから正しい選択をしてください。
参考文献
カスタムメイドのアライナー型矯正装置に対する本会の見解 (公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会)
https://www.jpao.jp/10orthodontic-dentistry/1020thinking/post_112.html
アライナー型矯正装置による治療指針(公益社団法人 日本矯正歯科学会)
https://www.jos.gr.jp/information/guideline_aligner_pointer
https://www.jos.gr.jp/4348
神奈川県歯科医師会会員・川崎市歯科医師会会員
かわさきノエル矯正歯科 松原 望