フッ化物洗口でむし歯から歯をまもる
- 2024/10/03
- 歯とお口の基礎知識
フッ化物洗口:むし歯予防のための効果的なケア方法
むし歯は世界的に見ても多くの人々が直面している歯の健康問題の一つです。日本では子どものむし歯は以前よりも減っていますが、未だに他の病気より多い罹患率となっています。特に幼児期から小児期にかけてのむし歯予防は、将来的な歯の健康を左右します。その中で、フッ化物洗口は効果的なむし歯予防手段として多くの国や地域で推奨されており、その有効性と安全性は多くの研究により示されています。この記事では、「フッ化物洗口ガイドライン」を基に、フッ化物洗口の正しい方法や効果について説明します。
フッ化物洗口ガイドライン
2003年に厚生労働省から発表されたフッ化物洗口に関するガイドラインです。子どものむし歯予防だけではなく、成人の歯根のむし歯に対する予防効果についても有効性を認めています。
フッ化物洗口とは?
フッ化物洗口とは、むし歯予防のためにフッ化物を含む溶液で口をすすぐ方法です。フッ化物は歯のエナメル質を強化し、酸による歯の脱灰を防ぎます。特に乳歯や生えたばかりの永久歯に対して、フッ化物の使用はむし歯予防に大きな効果をもたらします。
フッ化物洗口の対象者
4~14歳の期間に継続してフッ化物洗口を行うことが、最大のむし歯予防効果が得られるとされています。4歳以上の年齢を対象としているのは、うがいができるようになる時期を目安としているためです。また、成人の歯根のむし歯に対する予防効果も認められているので、誰でも生涯に渡ってのフッ化物利用を勧めています。
フッ化物洗口の実施方法
フッ化物洗口は自己応用法(セルフ・ケア)ではありますが、学校など地域単位で集団実施することで優れた公衆衛生的予防効果を得ることができます。フッ化物洗口ガイドラインでは具体的実施方法について説明しています。
フッ化物洗口の集団実施方法
1)器材の準備、先口剤の調整
施設での集団実施では、学校歯科医等の指導のもとに安全性を確保して実施します。
家庭での実施では、かかりつけ歯科医の指導のもとに洗口を行います。
2)洗口練習
フッ化物での洗口の前に、水で練習をして液を吐き出せることを確認します。
3)洗口手順
5〜10mlの洗口液で30秒間ブクブクうがいをします。洗口液を口の中にまんべんなく行き渡らせるように行います。
4)洗口後の注意
洗口後30分はうがいや飲食を控えます。集団実施では、余った洗口液は廃棄します。
フッ化物洗口の効果
長期間にわたり継続してフッ化物洗口を行うことで、むし歯予防効果が確実に得られます。フッ化物が歯の表面に付着することで酸への耐性が強まり、むし歯ができにくくなるのです。特に乳歯から永久歯への交換期において、日常的にフッ化物を使用することが重要です。また、フッ化物洗口は一度に高い効果を期待するのではなく、長期的な予防策として位置づけられています。そのため、定期的な歯磨きや歯科検診と併せて実施することが推奨されます。
参考文献
花田信弘. 小児う蝕予防の最前線. クインテッセンス出版株式会社. 2018
厚生労働省.フッ化物洗口ガイドライン.2003
厚生労働省.フッ化物洗口マニュアル(2022年版).2022
令和2年度学校保健統計調査(文部科学相)
- 執筆者情報
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神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
川原綾夏(カナリア歯科クリニック)