スポーツマウスガードの選びかた

執筆者
相模原市歯科医師会・神奈川県歯科医師会 会員 加藤 一成

どんなものをどのように使うか

スポーツマウスガードとはマウスピースの一種で、激しいスポーツをするときに歯を外傷から守るための保護装置のこと。
以前はボクシングやアメリカンフットボール、ラグビーの選手が装着することが多かったのですが、最近ではバスケットボールやサッカーなどほかの競技の選手にも使用者が広がっています。今回は、スポーツマウスガードの種類と選びかたについてお話します。

 

市販タイプはスポーツショップやネットで買えるもの

スポーツマウスガードには、市販タイプとカスタムメイドタイプがあります。
市販タイプはスポーツショップやインターネットなどで買えるもので、次のような種類があります。

ストックタイプ

馬の蹄(ひづめ)のような形をした既製品を、そのまま自分の歯に装着するものです。
歯ならびや噛み合わせ、口の大きさには個人差があるため、このタイプのスポーツマウスガードがピッタリ合うとは限りません。

マウスフォームドタイプ(ボイル&バイトタイプ)

お湯で温めて軟化した素材をすばやく口に入れ、噛み締めて自分の歯ならびや噛み合わせに合わせるというものです。
温度管理が難しいことがあり、火傷に注意する必要があります。最近では、何度か軟化しなおすことができるタイプのものが発売されています。

歯科医院で歯型をとってつくるカスタムメイドタイプ

これに対し、カスタムメイドタイプは歯科医院で歯型を取ってつくるもので、次のような種類があります。

バキュームタイプ

1枚のシート状の材料(マウスガードシート)を加熱して軟化したものを器具に吸引させ、歯型に合わせて形成するタイプ。製作工程がシンプルで、比較的短時間かつ安価に製作することができます。

 

ラミネートタイプ

加圧成型器と呼ばれる器具を使ってマウスガードシートを数枚加熱し、歯型に合わせて層状に圧接して形成するタイプ。部分的にマウスガードシートの枚数を増やし、衝撃吸収性を高めることができます。

 

埋没填入タイプ

入れ歯(義歯)をつくるのと同じような方法でつくるタイプです。個人個人の歯ならびや噛み合わせに応じて形状や厚みなどを自由に設計でき、より繊細な仕上がりが期待できます。
このため、自分の歯ならびや噛み合わせにピッタリとフィットしたスポーツマウスガードが得られるメリットがあります。
一方、製作には多くの時間と労力を要し、費用も高額になります。

 

 衝撃吸収性、適合性などを考慮し、目的にあったものを

 

スポーツマウスガードは、競技中や練習中に選手同士の身体が激しくぶつかり合ったとき、自分の歯を守るだけではなく、相手の選手に歯が当たって傷つけないためにも役立ちます。
しっかり歯を噛み締めることで集中力が増し、勝負の場面でより能力が発揮できるという効用もあるようです。

また、スター選手にあやかって同じようなスポーツマウスガードを使うことで、気分が上がるということもあるでしょう。

スポーツマウスガードを選ぶポイントは、競技の種類やレベル、スキルなどに応じて1)衝撃吸収性、2)適合性(自分の歯にフィットすること)、3)形状の安定性などを考慮するということになります。

私は歯科医師ですが、市販の既製品を否定するつもりはまったくなく、肯定するものでもありません。
ご自分の使用目的に合ったものを選び、お使いになってみてはいかがでしょうか。

 

■参考文献

カスタムメイドタイプ 新マウスガードのつくり方 石上惠一編著 医歯薬出版刊

執筆者情報
加藤 一成
相模原市歯科医師会・神奈川県歯科医師会 会員
加藤歯科クリニック

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