学校歯科健康診断の目的
- 2023/10/04
- 歯とお口の基礎知識
結果が通知されたら
毎年5月から6月にかけて、学校で健康診断が行われます。健康診断には、身体測定のほか内科や眼科、歯科の診察、健診などがあります。
このうち、歯科健診は歯や口腔の疾病および異常の有無を把握するため、学校保健安全法に基づいて6月30日までに行われます。
健康診断の結果は21日以内に児童生徒と保護者に通知され、歯科医師による診断が必要と判断された場合は、あわせて「歯科受診のおすすめ」が通知されます。
すでに健康診断の結果や「歯科受診のおすすめ」が届いたという皆さんも多いことでしょう。
今回は、歯科健診の意義と内容、健診後の対処のしかたなどについてお伝えいたします。
健康診断の意義
健康診断の意義(目的)は、学校生活を送る上で妨げとなるような疾病をスクリーニングし、健康診断の結果を保健教育に役立てることにあります。
スクリーニングとは、自覚症状や身体所見、各種検査結果などから最終的な診断を下す、いわゆる「確定診断」ではなく、異常の有無を調べ、異常が認められた場合、定期的な観察や専門家による診断が必要かどうかを判定してふるい分けするものです。
歯科健康診断の項目
歯科健康診断は学校歯科医により、次のような項目で行われます。
1.姿勢・顔面・口の状態の診査
異常がある場合は、「学校歯科医所見」に記載。
2.顎関節の診査
0:異常なし
1:定期的な観察 開閉口時の顎の偏位 開閉時に痛みはないが軽度の顎関節部の異常を訴えるもの。
2:専門家による診断が必要 開閉口時に痛みを訴えるもの。開口障害のあるもの。
3.歯列・咬合の診査(図1)
0:異常なし
1:定期的な観察 矯正治療中。軽度な歯列異常・不正咬合。
2:専門家による診断が必要 重度な歯列異常・不正咬合。
図1
4.歯垢の付着の診査
・良好
・若干の歯垢付着 歯の1/3以下
・相当の歯垢付着 歯の1/3以上
5.歯肉の審査
0:異常なし
1:定期的な観察 歯周疾患要観察者(GO) 1)歯石の沈着はないが、歯肉に軽度の炎症があるもの。2)清掃指導により炎症が消退すると思われる程度のもの。
2:専門家による診断が必要 歯周疾患要処置者(G)
6.歯の審査
健全歯:/(斜線)
むし歯:C
要観察歯:CO
処置歯:◯
喪失歯:△
要注意乳歯:×
7.その他の疾病および異常
歯の硬組織の異常:斑状歯、癒合歯、癒着歯、歯牙破折、エナメル質形成不全、円錐歯
歯数異常:先天性欠如歯、過剰歯
歯の位置異常:転位歯。低位歯、埋伏歯
口唇・口蓋の異常:口唇裂、口蓋裂、口唇炎、口角炎
軟組織の異常:ヘルペス、エプーリス、アフタ、潰瘍、小帯異常、舌炎
不良習癖:咬唇癖、咬舌癖、吸指癖
表 児童生徒健康診断票(歯・口腔)記載例 アルファベットは乳歯、数字は永久歯
健康診断後の措置
健康診断の結果は、健康診断終了後21日以内に児童生徒と保護者に通知されます。専門家による診断が必要と判断された場合は、あわせて「歯科受診のおすすめ」が通知されます。
また、健康診断後の事後措置としては、健康相談、個別指導、健康診断結果の統計的まとめなどが行われています。
このように、歯科健康診断は単に歯や口腔の検査をするだけではなく、お子さんの「歯・口の健康づくり」を促進するために行われています。「歯科受診のおすすめ」が届いたら、ぜひ歯科医院を受診してください。
専門家による診断が必要と判断された児童生徒だけでなく、「健康」「要観察」と判断されたお子さんも「歯・口の健康づくり」を維持・促進するために定期的な歯科医院の受診をお勧めいたします。
健康診断の結果は、「歯・口の健康づくり」のきっかけとなり、生涯にわたって健康を維持・促進するために役立ちますので、ぜひご活用ください。
参考文献
公益社団法人神奈川県歯科医師会「学校歯科保健診断マニュアル平成28年改訂版」2017年
公益社団法人日本学校歯科医会「学校歯科医の活動指針令和3年改定版」2021年
神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員 カナリア歯科クリニック 川原 綾夏