お口と全身の関係 歯周病は糖尿病の第6の合併症!
- 2022/11/22
- 歯とお口の基礎知識
10月26日(月)放送のTVK「猫のひたいほどワイド」内、健康!歯っピーライフのコーナーの紹介です。
このコーナーは、歯やお口の健康に関する情報を神奈川県歯科医師会広報川原委員が伝える月に1回のコーナーです。10月のテーマは「お口と全身の関係 歯周病は糖尿病の第6の合併症」でした。
糖尿病も歯周病も有病者が多く、国民病と言える生活習慣病です。糖尿病の患者数は国内で1000万人を超えています。糖尿病は血液中の血糖値が高くなる病気です。血液中の濃度の高い糖は全身の血管を傷つけてしまいます。そして、多くの合併症を引き起こします。重症化すると失明を起こす糖尿病性網膜症、透析の1番の原因となる糖尿病性腎症、神経障害が糖尿病の3大合併症です。そして、心疾患、脳卒中と合わせて歯周病も糖尿病の合併症であることが分かっています。
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歯周病は、歯を支える歯槽骨を溶かしてしまう病気です。歯周病にかかる人も多く、成人の抜歯の原因の第一位が歯周病です。歯周病は初期の段階では、自覚症状が出ません。重症化すると、歯ぐきが腫れる、歯肉から出血する、歯がグラつくなどの症状が出てきます。歯周病原因菌が引き起こす炎症が歯周病の原因です。歯周病の原因となる細菌を口の中から取り除くことが、歯周病の予防となります。歯周病の細菌は、その他の口の中の細菌と集まって歯垢として存在します。歯垢は歯磨きなどのセルフケア、歯科院でのプロフェッショナルケアで除去します。歯を支える歯槽骨を溶かす歯周病ですが、全身の病気にも関連していることが分かってきています。歯周病原因菌が引き起こす炎症や菌そのものが全身に影響するのです。その中でも、糖尿病と歯周病は相互に関連
する病気として注目されています。
糖尿病患者は健康な人に比べて、歯周病の発症率が2.6倍高かったという報告があります。1)このデータが糖尿病の第6の合併症が歯周病であると言われる所以です。血糖値が高い状態が続くと、細菌などと戦う機能を持つ白血球の働きを弱めてしまいます。歯周病は、歯周病原因菌が引き起こす感染症です。本来、細菌と戦う機能を体は持っていますが、糖尿病による血液中の高血糖状態が続くと白血球が正常に機能せず歯周病に感染しやすくなるのです。
糖尿病と歯周病は相互に関連がある生活習慣病です。重度の歯周病は糖尿病の悪化を招くことも分かっています。歯周病原因菌が炎症を引き起こしますが、この細菌群は内毒素という毒素を発生します。内毒素は血管を通して全身へと巡ります。内毒素を抑えようと体の防御システムが働きますが、そこで産生される物質が血糖値を下げてくれるインスリンの邪魔をします。また、歯周病の治療を行うと糖尿病の改善が認められるという報告もあります。2)
糖尿病と歯周病、どちらも罹患する人が多い生活習慣病です。運動、栄養、休息と規則正しい生活心がけ、健康な生活を続けられるようにしましょう。
歯周病は初期の段階では、自覚症状はなく気づきにくい病気です。歯科医院での定期検診とプロフェッショナルケアを受けてお口の健康を維持しましょう。
1) Nelson RG,Shlossman M,Budding LM,Pettitt DJ,Saad MF,Genco RJ,Knowler WC.Periodontal disease and NIDDM in Pima Indians.Diabetes Care.1990;13:836-40.
2)Simpson TC,Needleman I,Wild SH,Moles DR,Mills EJ.Treatment of periodontal disease for glycaemic control in people with diabetes(Review).Cochrane Database of Systematic Reviews 2010,Issue 5.Art.No.: CD004714.DOI:10.1002/14651858.CD004714.pub2.