歯医者さんがキライなあなたへ 早めに受診し、治療を中断しないで!

日ごろ、歯科医院を経営する立場でしばしば痛感するのは、「世の中には歯医者さんがキライな人が多いんだなあ」ということです。

その理由の1つには、むし歯や歯周病がひどくなるまで放っておき、痛みや腫れに耐えきれなくなってから、泣く泣く受診される患者さんが多いことが挙げられます。

そういう患者さんがクリニックにいらっしゃると、これはさぞかしおツライだろうと同情しつつも、「早く見つけて早く治せば、通院回数が減らせるし、治療費や時間も節約できるのになあ」と、心の底から残念に思うのです。

早めに治療しないとお金も時間もムダに

早めに治療しないとお金も時間もムダに

むし歯が小さいうちに受診していただければ、むし歯の部分をきれいにし、レジンという歯科用プラスチックを詰めると、はい治療終了。

もちろん、次回の通院も必要ありません。ところが、「痛みは大したことないし、忙しいし、しばらく様子をみようか」などと放っておくと、むし歯がどんどん進行して神経に達し、耐えがたい痛みや腫れに悩まされることに。

そうなってしまえば、歯科医院での治療も、神経を取り、薬を投与し、土台をつくって、型をとり、補綴物(ほてつぶつ)(かぶせものや詰めもの)をつくって処置するという大がかりなものになります。

その場合、通院回数は最低5回、治療費も5倍では済みません。

自己判断で治療を中断せずに相談して!

歯医者さんがキライな人が多いと痛感する、もう一つの理由は治療の途中で来院されなくなる患者さんが多いことです。

「とりあえずひどい痛みも治まったから、もういいか」と、自己判断で通院をやめてしまうと、多くの場合、むし歯が進行して症状がぶり返し、ゼロからではなく、マイナスから治療を始めることになります。

要するに、治療を途中でやめると余計に悪くなってしまうということです。

たとえば、進行したむし歯の治療は、前述のように、まずは神経を取り、むし歯の部分をきれいにして細菌による感染や炎症をおさえる薬を投与します。

このような初期治療が十分に完了するには、何回か通院していただく必要があります。

なぜなら、むし歯や歯周病の原因となる細菌はなかなかしぶとく、薬を何回か投与しないと排除しきれないからです。

最後まで薬を投与しないと、結局はまた感染してそれまでの治療がムダになり、ひどい痛みや腫れなどのつらい症状に泣かされることに。

こうした状態で再び歯科医院を受診すれば、当然のことながら通院回数も多くなり、治療費もかさみます

歯科医院での治療中、何らかの事情で通院が難しくなることもあるでしょう。

そんなときは、遠慮なく歯科医師に相談してください。

そんなときは、遠慮なく歯科医師に相談してください。
管(こんかん)充填(じゅうてん)という処置まで受けていれば、多少受診の間隔が空いても大丈夫といったように、目安を示してくれます。

疑問や不安があればメモして遠慮なく

歯科に限らず、どんな診療科にかかるときでもいえることですが、よい医療はまっとうなインフォームドコンセント(説明と同意)のもとに成立するものです。

歯科医師の前では緊張したり遠慮したりして、疑問に思ったり不安を感じていることを聞きそびれてしまうこともあると思います。

そんなときは忘れずにメモし、次回の受診時にお尋ねください。

また、治療後の服薬やケアのしかた、日常生活上の注意など、歯科医師や看護師、歯科衛生士にいわれた大切なことも、まめにメモしておくとよいでしょう。

歯医者さんからのメッセージ

私たち歯科医師のホンネは、歯医者さんがキライな人ほど早く受診してほしいということです。

少しでも歯の痛みや違和感があれば、「しばらく様子をみよう」なんて思わず、すぐにでも歯科医院を受診してください。

また、歯科医院に通院中、「とりあえず痛みや腫れがひいたから、いいだろう」などと、自己判断で治療を中止するのも厳禁です。

歯科診療に関する疑問や不安、受診間隔など、どんなことでも遠慮なく歯科医師にご相談ください。

歯の健康を守り、大事な時間とお金をムダにしないためにも、私たち歯科医師をキライにならず、上手にお付き合いくださることを祈っています。

神奈川県歯科医師会・川崎市歯科医師会会員
瀬野歯科医院 瀬野 登

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