スポーツによる外傷から歯を守る スポーツ用マウスガードに注目!
- 2022/08/31
- 歯とお口の基礎知識
東京オリンピック開催を2年後に控え、国民のスポーツへの関心はいやがうえにも高まっています。
スポーツを行う魅力は、練習を重ねて上達していく喜び、勝者の歓喜と敗者の悲哀、健康増進、チームメイトやライバルとの交流など多岐にわたります。
スポーツを安全に楽しむために
このように人生を豊かにしてくれるスポーツですが、安全に対する配慮を欠くと大きなケガにつながるのも事実です。
試合中や練習中の事故で歯が折れたり、欠けたり、グラグラしたり―――そんな歯の外傷を予防するため、スポーツ用マウスガードを装着されることをお勧めします。
顔面の外傷のうち、スポーツによるものが約1〜2割を占めるとういう調査結果が示されています1)。スポーツによる顔面の外傷部位で多いのは、上の前歯の破折(折れたり欠けたりすること)や下の顎の骨折です。
マウスガードは、このようなスポーツによる歯の破折を防ぐうえで役立ちます
2)。
しっくりこないマウスガードを使うと…
ボクシングやアメリカンフットボールなど、スポーツによっては大会規定にマウスガードの装着が義務付けられています。
しかし、マウスガードの形状や材質などについては選手個人の裁量にまかされており、その機能や使い心地には大きな差があるのが実情です。
マウスガードには、使用者が自作するタイプと歯科医師が作製するタイプがあります。
自作のマウスガードは、特殊な樹脂をお湯で温めて軟らかくして作製するものが多く、安価ではありますが、実際に使ってみるとしっくりこないこともあります。
しっくりこないマウスガードを使った場合、歯の外傷を十分に予防できないばかりでなく、噛み合わせに違和感があるため、試合や練習に集中できなくなるおそれもないとはいえません。
また、発音が不明瞭になって、競技中の意思の疎通がうまくいかなかったりすることも考えられます。
さらに、違和感があるために練習中には使わないということになれば、当然のことながら、練習中の歯の外傷を防ぐことができなくなります。
歯医者さんでマウスガードをつくりましょう
一方、歯科医師にマウスガードの作製を依頼すれば、使用する方のお口のなかの型を取ってつくり、装着したときに噛み合わせなどに違和感がないよう調整します。
しっかりフィットするマウスガードを装着するメリットは、思いのほか大きいといえます。
- 1 スポーツ時の歯の外傷を十分に予防できる
- 2 噛み合わせに違和感がないため試合や練習に集中でき、パフォーマンスが向上する
- 3 普段どおりの明瞭な発音ができ、競技中に十分な意思疎通ができる
- 4 使用感がよいため装着するのが苦にならず、試合中、練習中を問わず歯の外傷を防ぐことができる
このように、歯科医院でマウスガードを製作すれば、十分に歯の外傷の予防ができ、違和感もなく、明瞭に会話できるという、いわば「使えるマウスガード」を装着することができるというわけです。
また、マウスガードを使用する前後の洗浄や歯みがきをおこたると、歯やお口のなか、マウスガードが細菌の温床となり、むし歯や歯周病の原因になることもあります。
このため、マウスガードをつくる際は、歯科医院で適切なアドバイスを受けることも大切です。
オリジナルのマウスガードをつくるには
歯科医院でマウスガードを製作する手順をご紹介しましょう。
ステップⅠ まずは、やわらかい材料樹脂をお口になかに入れ、歯の型取りを行います。
ステップⅡ 型取りしたものに石膏を流し込むと、お口のなかのコピーができあがります。
ステップⅢ マウスガードはお好みの色で作製することができます。お好きな色のシートをお選びください。
ステップⅣ 石膏でできたコピーにシートをかぶせて成形し、マウスガードを作製します。
実際に装着していただき、噛み合わせに問題がないよう調整すると、いよいよオリジナルの「使えるマウスガード」の完成です。
*マウスガードの歯の部分に付いた色は、噛み合わせをチェックするため歯に塗布した無害の色素です。
歯医者さんからのメッセージ
スポーツによる外傷から歯を守り、最高のパフォーマンスを発揮するためにはマウスガードが役立ちます。
ただし、マウスガードがしっかりフィットしていないと期待通りのメリットは得られません。
歯科医院でテーラーメイドのマウスガードを作製し、スポーツを安全に楽しみましょう。
参考文献
- 1) 権田知也ほか.使ってもらえるマウスガードの製作ガイド.永末書店.2016.41p
- 2) FDI policy statement 2008:Sports mouthguards:
https://www.fdiworlddental.org/resources/policy-statements-and-resolutions/sports-mouthguards(参照2018.3.7)
神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
カナリア歯科クリニック 川原 綾夏